宅配業者に「荷物見つからないのであったら持ってきますね」と言われた話

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数年前のことなのに、今思い出しても腹が立つ出来事はないだろうか。

 

わたしが経験したのは、ある宅配業者の、宅配業者あるまじき言動である。

今だからこのようにブログのネタとして話せるが、当時は焦りしか感じなかった。

思い起こしても、こちらに落ち度はなく、100%相手側のミスであるというのに、謝罪の一言もなかったことに今でも腹が立つ。

 

そんなある日の出来事を、教訓としてここに記しておこうと思う。

 

【第1章】午前着のはずの荷物が届かない

 

あれはいつかの秋のことだった。

わたしが働いていた写真館では、毎年10月11月になると七五三の着付け予約が増え、毎日のように着物が保管センターから届くようになっていた。

 

その日は、次の日の朝一のお客様が使用する着物が届くはずだった。

午前着指定。いつもであればだいたい12時頃に宅配業者がやってきて荷物を置いていくのだったが、その日は13時頃になってもやってこなかった。

 

【第2章】巻き起こる波乱の予感

 

その日店の責任者であったわたしは、届かないことを不審に思い、まず着物を保管しているセンターの社員で、個人的に仲良くさせてもらっている田中さん(仮名)に連絡を入れた。

 

「午前着の着物が届かないんですけど、宅配業者からの連絡もないので確認してもらってもいいですか?」

 

保管センターの田中さんはすぐに確認してくれた。

 

「その地域の配達担当者の鈴木(仮名)から、すぐに連絡を入れてもらうから待っててね」

 

 

そして数分後に悪魔から電話がかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、荷物どっかいっちゃって。探してるんすけどね、営業所に見当たらないんすよ(笑)」

 

 

 

 

わたしは開いた口がふさがらず、絶句した。

 

【第3章】ことの重大さを理解しない悪魔との戦い

 

絶句したわたしの様子に気付くふうもなく、鈴木は軽い調子でこう聞いた。

 

「なんか重要なもんっすか?いつまでに配達でしたっけ?」

 

ここでようやく焦るという感情を取り戻したわたしは説明した。

 

「今日の午前着で頼んでるんですけど…明日の10時からお客様が使う着物なんです。

何か足りない小物とかがないかチェックしなくちゃいけなくて、もし不備があったら保管センターから速達で送ってもらわなきゃいけないんで、午前着にしてたんです」

 

ここでことの重大さに気付くかと思われたが、そう簡単にことは運ばない。

鈴木は笑いながらこう言う。

 

「あ-、なるほど。ちょっと探してみますね。見つけたら持っていきます(笑)」

 

 

普段ならこの辺でぶち切れるわたしだが、この鈴木の軽い口調と態度に頭が混乱してパニックになった。

 

「いや、だから明日使うんで早く持ってきてもらわないと…」

 

そう言ったものの、すでに電話は切られていた。

 

【第4章】泣きの電話、17時までと豪語する鈴木

 

明日、お客様に着てもらう衣装がない。

 

この事実を受け入れるのは到底難しく、寒気がするほどの不安に駆られたわたしはまず田中さんに連絡をして、鈴木との会話を全て伝えた。

 

「え!?そんなこと言われたの!?ちょっと向こうの営業担当に伝えるわ」

 

 

数分後、鈴木から再び電話があった。

 

「えーと、17時までには持っていくんで。今探してます」

 

わたしはもはや、こいつの言うことなど信用していない。

本来であれば自分の中に眠っている関西人魂が動き出し

「あんなぁ、人ごとやと思ってんのやろ?配達もろくにできんとようその仕事やってんなぁ。仕事なめとるん?お客さんに迷惑掛けてもええと思ってるんか。ほんまいい加減にせえや」

と怒鳴り散らすところであろう。

 

しかし文句を言うことよりも先にやることがあったのでグッとこらえて電話はすぐに切った。

この時点で時刻はすでに15時。

そして田中さんに泣きの電話を入れる。

 

「保管センターに同じ着物の在庫ありますか?もし荷物が見つからなかった場合は閉店後に取りに行ってもいいですか?」

 

【第5章】そして訪れる閉店時間

 

わたしは17時まで待った。

そうしたくはないが、鈴木の言ったことを信じるほかに荷物が届く保証はないので、ただひたすらに会いたくもない鈴木を待った。

 

他のお客様の接客をしているなかで、しかし時は無情にも流れ、気付けば17時を30分も超えていた。

鈴木からの連絡はもちろんなかった。

 

お店の閉店時間は20時。それまではわたしもお店から出ることができない。

保管センターまではお店から電車とバスで約1時間。

 

もはや保管センターまで取りに行くしかない。

田中さんに電話を入れ、鈴木が来ないから閉店後にセンターまで行きますと伝えた。

怒りは忘れよう、そして1秒でも早くお店を閉めようと早めに精算処理や閉店作業をしていた19時半頃であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうもー!○○(会社名)でーす」

 

 

 

 

 

 

ここで鈴木の登場である。

 

「見つけにくい場所にあって遅くなっちゃいました(笑)じゃ、ここにサインを…またお願いしまーす!」

 

颯爽と帰っていく後ろ姿をぼんやり見つめて、わたしは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も1日長かったな。

 

 

そうしてふと、届いた荷物に目をやると段ボール箱の角はつぶれ、伝票は破れかかっていた。

それは見なかったことにして中身を確認する。

 

綺麗な藤色の着物と着付けに必要な小物がすべて無事にそろっていることを確認して、わたしは静かに閉店作業を続けることにした…

 

 

これはノンフィクションです

 

実際にあった話を物語形式でお伝えしました。

ちなみにこのあと、上長にはしっかりご報告させていただき、以来鈴木の顔は見ておりません。

 

この事件が起きる数ヶ月前までは、別の宅配業者と契約していたのでなんの問題もなかったのですが、鈴木が所属している会社との契約に変わってからは、わたしの店だけでなく他の店舗でも様々な問題が起きているようです。

 

社会人として、というか人間としてあり得ない言動に腹が立つと同時に、仕事にプライドがないってかわいそうだなと思いました。

自分のやっていることに誇りがないから、商品だって適当に扱えるし、お客さんがどうなろうとしったこっちゃない、って考えてるんですかね。

 

たとえば一度でも謝ってくれていたなら、少しは怒りも収まったかもしれない。

人と接する態度ひとつで印象は大きく変わるはずなのに。

 

こんな従業員がたくさんいる会社なんて恐ろしすぎます。

もう二度と経験したくない、ある秋の事件話でした。

 

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